「9回表、スリーボール、ツーストライク、ピッチャー大谷、投げましたぁぁ～」

「空振り三振～！」

メジャーでもトップクラスのダルビッシュや大谷が伸び盛りの国内組の若手選手を引っ張り、初の日系人代表のヌートバーが、“ペッパーグラインダー”よろしくスパイスを加え、強烈なエネルギーを放つ集団となった今大会の侍ジャパン。そのニッポン球界が誇る精鋭たちが、ついに世界の頂点に立った。

『2023 ワールド・ベースボール・クラシック（ＷＢＣ）優勝』

一時ラウンドの圧勝劇と準々決勝のメキシコ戦の歓喜を経て迎えたアメリカとの決勝戦。異様な盛り上がりと、最後まで目が離せない緊迫した試合展開。でも、いったい誰がこんなドラマチックな結末を想像しただろう。
最後の打者マイク・トラウトを三振に仕留めたその時こそ、持ってる男、大谷翔平がＷＢＣの伝説を塗り替えた瞬間だ。

「漫画？　映画？　ものすごいもの見てる。泣ける―！」「とんでもない現実だ」「誰がこんな台本書いたの?」「最初から最後までファンタジー過ぎる」「まじでこれアニメだろ」などと歓喜の声が並んだ。

だが、世界の頂点へ駆け上がるまでの軌跡には、人間味あふれるサムライたちのそれぞれのドラマがあった。

若手との壁を取り払ったダルビッシュ、自然とチームの中心にいる大谷、期待以上に溶け込んだヌートバー…。極度の不振に苦しんだ村上、今シーズンから大リーグに挑戦する吉田、3.11に先発した佐々木朗希、骨折しても試合に出続けた源田、ケガで出場出来なかった誠也と栗林など、それぞれの思いが結集され、まさにチーム一丸でつかんだ世界一だ。

「失われた30年」を超えて続くニッポン経済の低迷や世界的に低い出生率など、ニッポンに関する世界の報道は決して明るいものばかりではない。中国をはじめとするアジア諸国が国力を強める中、世界におけるニッポンのプレゼンスが失われつつあるのを正直なところ感じている。

そんな中、今大会の侍ジャパンの選手たちの大活躍で、ニッポンは今、世界から大きなスポットライトを浴びている。選手たちの活躍がくれた自信と勇気と誇りを糧に、ニッポン人は低迷の中で萎縮することなく、今こそ前進する時がきたのではないだろうか。そんな力をもらった気分だ。

平日(日本時間3月22日)の朝の試合開始。気になって家事も仕事も手につかなかった人も多かったと思う。暗い話題の多い昨今、せめてひとときの“宴”を楽しんでもいいんじゃない。

「侍ジャパン！ついに世界一奪還しましたー！」

「うぉぉ～」

あの日、侍ジャパンの優勝が決まった瞬間、あなたはどこで誰と観てましたか？