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社長のコラム 「しゃコラ」

本当のところは誰もわからない

2020-02-18
春節のお祝いムードをぶち壊してくれた「新型コロナウイルス」。ニッポン人にも感染者が現れ、今や目に見えない恐怖が国全体を包み込む。観光地では中国人の姿が消え、ドラッグストアではマスクが売り切れた。新しい感染症を巡り国連の機関は緊急事態を宣言。国民を守るはずの政治や行政は、ちゃんと機能しているのだろうか。現時点で収束時期が見込めないだけに心配が尽きない。

武漢(中国)からのチャーター機で帰国した人々を待っていたのは、「隔離」という思いもよらない扱いだった。感染者を含む邦人の帰国劇は、実にひどいもので、現場はいまだに混乱している。また、クルージングを楽しむはずの豪華客船が、一転して悪夢のような「隔離船」となり、世界中へ報道されている。感染者が増えるたびに速報が流れるのは、もはや日常茶飯事。

だが、本当のところは誰もわからない…。

ニッポンのメディアは、また一つ、中国が抱えている問題を指摘しようと駆け回っているようにも見える。中国のミスや欠点を「チャイナリスク」と大げさに報道すれば、テレビは視聴率を新聞や雑誌は売り上げを伸ばすチャンスにでもなるのだろうか。すべてのメディアは「我々こそが真実を報道している」と主張しているが、果たしてすべてが本当に真実なのだろうか。私は新聞ひとつとっても、一紙だけ読んだからといって、真実は何もわからないと思っている。私がなるべく多くの新聞に目を通すようにしているのは、そのためだ。

また、ニッポン国内の報道だけを見ていては、世界で何が起こっているのかわからない。中国やロシアのメディアにも関心を払い、新興国のメディアにも目を通しているうちに、何となく本質が見えてくることもある。そういう意味では、世界をミスリードするのはメディアの仕事だとすらいえる。

時として、大衆はニュースに過剰反応してしまうもの。パニックに陥ると、買う必要のないものを慌てて買ったり、デマや嫌がらせといったものまで横行する。目に見えないウイルスも恐ろしいが、人を差別する心の闇こそ恐ろしい。今回の新型ウイルスは、咳や発熱だけでなく「風評被害」という病状も、もたらしているのだ。

しかし、今回の特徴はウイルスの側にあるというよりむしろ、私たちが暮らす社会構造の変化にあるのではないだろうか。人やモノが地球規模で簡単に移動するグローバル化が急激に進む中国で起きたことが、爆発的な感染拡大への懸念を生み出したのだ。現代社会の発展そのものが、かつてない新興感染症の広がりを起こす下地にもなっている。

今の時代、病原となるウイルスや菌はあっという間に遠くまで拡散する。世界の果てで発生した病気が、明日には私たちの近所まで迫っているかもしれない。それだけ私たちは危険な状況に置かれている。そんなリスクを私たちは背負いきれるのだろうか。
こんな状況の中、ニッポンはあと5ヶ月で東京オリンピックを迎える…。


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