家族より先にAIへ相談する時代
プロ野球人気球団の監督の逮捕、辞任、そして謝罪会見。
スポーツニュースとして報じられた出来事だったが、いつしか「家族とは何か」を考えさせる話題になっていた。
今回、多くの人の心に残ったのは、娘さんが最初に助けを求めた相手が家族でも学校でもなく、チャットAIだったという点ではないだろうか。
もちろん、暴力や深い苦しみを抱えたとき、誰かに相談することは決して間違いではない。むしろ声を上げることができず、一人で抱え込んでしまう方が深刻な場合もある。
父親は逮捕され、監督を辞任した。その後の会見では、娘さんからの手紙が読まれ、「今は関係を修復しようとしている」と説明された。
ただ、多くの人が複雑な気持ちになったのは、誰かを責めたいからではなく、この親子がそこに至るまでにどれほどの葛藤を抱えていたのだろうと想像したからかもしれない。
家族というのは不思議なもので、外から見れば恵まれているように見えるほど、かえって本音を言えなくなることがある。有名人の家庭であればなおさらだろう。
父は「監督」として見られ、娘さんは「監督の娘」として見られる。本当はただの親子でいたいはずの時間にも、世間の視線が入り込む。
そして現代では、その「助けて」という言葉を最初に受け止める存在が、人間ではなくAIになることもある。
AIは否定しない。説教もしない。時間も選ばない。
だからこそ、誰にも言えなかった思いを打ち明ける最初の相手になることがある。
今回の件は、単なる家庭内の問題でも、有名人の不祥事でもない。
「家族より先にAIへ相談する時代」が現実になったことを、私たちに示した出来事だったように思う。
残念なのは、AIに相談したことではない。
娘さんがそうするまでの間に、もっと安心して頼れる人や場所があったなら――と感じてしまうことなのかもしれない。
そして多くの人が覚えたやるせなさも、きっとそこにあるのだと思う。





