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社長のコラム 「しゃコラ」

企業城下町の未来はいかに

2021-05-27
「まさかこの街から重厚長大産業の代表企業がいなくなるとは…」

この街とは、私が暮らす広島県呉市。ここには戦艦大和を建造したことで有名な旧日本海軍の「海軍工廠」があった。そして、戦後その軍需工場跡地に建てられた日本製鉄瀬戸内製鉄所の呉地区は、2021年9月に高炉を休止し、23年9月末には製鉄所を全面閉鎖することを発表。戦後の復興から経済成長まで70年以上もの間、この地域の経済を支えてきた製鉄所の火が消える事態に。閉鎖の発表から1年たった呉の街からは、コロナ禍の影響に隠れて、悲壮感が伝わりづらい。

人口減少や少子高齢化に伴う需要縮小、中国企業とのし烈な競争、脱炭素での覇権争い。グローバル化の中、製造業を取り巻く環境は近年、一変した。戦後のものづくりを支えてきた鉄鋼業は、時代の変化を経て大きな変革を迫られ、国内での工場の縮小が相次いでいる。国際競争激化を見据え、大胆な経営資源の選択と集中によって立て直しを進めたい模様。

日本製鉄が製鉄所の閉鎖を決めたことで呉市では多くの雇用が失われる。「城主」の弱体化によって衰退の憂き目にさらされる「企業城下町」としての呉市は今、人口流出の危機に直面し、まちづくり再考を迫られている。
長年、呉市の経済を牽引した中核企業が消えることにより、地域の経済活動への影響や雇用へのダメージの衝撃は計り知れない。グローバル化によって経済の構造変化が、地方都市の暮らしや雇用にも大きな影響を及ぼすことを痛感する。

県や市は日本製鉄に呉地区存続を求めてきたが、決断は変わりそうにない。呉市の中心地を歩くと、新型コロナウイルスの影響で灯りが消えている店が増えているように感じる。そこに追い打ちをかけるようにやってくる製鉄所の閉鎖へのカウントダウン。

地元の経済界などからは、3年前の西日本豪雨の被害、新型コロナウイルスの影響、そして今回の製鉄所の閉鎖は、呉市にとって「3重苦」だという言葉をよく耳にする。だが、呉市が特別ではなく、同じような問題を抱える地方都市は、全国にたくさんある。

どうしても目先の暮らしに困らないから、住民も行政もなかなか危機感を抱かない。後戻りできない「人口激減時代」に足を踏み入れたことを、そろそろ真剣に受け止めなければ、取り返しがつかなくなる。実際に人口が激減し始めてから対策を考えても遅い。

「鉄の街」と呼ばれた地方都市“呉市”に突き付けられた人口流出の危機。そこには私たちの想定以上の過酷な未来が待っている。それを避ける手立てはないものだろうか…。



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