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社長のコラム 「しゃコラ」

監視カメラが捉える社会

2020-08-21
いつもなら速足で通り過ぎる道を、周囲の風景を眺めながら、ゆっくりと歩いてみる。すると、いろいろなものが見えてくる。

例えば監視カメラ。あらためて探してみると知らないうちに、ずいぶん増えている。物陰に上手に隠されたカメラも少なくない。「テロ警戒中」の表示とセットになったカメラだってある。でも政府の要人が住んでるわけでもないこんな田舎町で、いったいどこの誰が、何の目的で、テロを画策するというのだろう。

オフィス街を歩いてみると、大きなビルのほとんどの正面玄関には、必ずといっていいほど「特別警戒実施中」と記されたサインボードが置かれている。これも今ではよくある光景だ。

でもこれもまた、今、いったい何に対して、何のために、それほどの警戒態勢をとらなければいけないのか、その理由がどうしてもわからない。

監視カメラはオウムの事件以降、そして、「特別警戒実施中」「テロ警戒中」などの表示は、2001年の米国同時多発テロ以降に増え始めた。つまり、慢性で恒常なのに特別警戒。明らかな論理矛盾。でもその矛盾を矛盾として社会全体が感知できなくなっているのではないだろうか。

そして、最近の新型コロナウイルス感染に怯えた世界。これこそ最大限の「警戒」を必要としている。

今や私たちの日常を覗き見てきたはずの監視カメラに映っているのは、コロナ禍によって変化した生活様式。コロナウィルスそのものは映らなくても、それによって変化させられた社会を監視カメラはちゃんと捉えている。

そこには街を人が歩いていなかったり、歩いていてもマスクをしていたり、開いているはずのお店が閉まっている、といった、今までと違う日常の風景。

誰も望んでいないコロナの時代。人々の営みはそれでも続いていく。自粛と分断と日本型社会で広がる独自のアフターコロナの社会を、監視カメラはこれからも捉え続けることだろう。


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